雷山小過(らいさんしょうか)

六四卦六十二番目に位置するのが、雷山小過(らいさんしょうか)となります。雷山小過(らいさんしょうか)を表す卦は、艮卦☶(ごんけ)末息子の上に震卦☳(しんけ)が長男のっかった卦です。


上卦は、震卦(しんけ)です。震卦は陽爻1段の上に陰爻が2段乗った形で、家族においては、長男をあらわします。八卦においては雷を表しています。


下卦は艮卦☶(ごんけ)です。艮卦は陰爻2段の上に陽爻が乗った形で、家族においては末っ子 三男をあらわします。八卦においては山を表しています。

六十四卦の六十二番目に位置するのが、雷山小過(らいざんしょうか)です。この卦は、私たちの日常の中に溢れている「小さなまごころ」を、どのように形にして届けるべきかを教えてくれる、とても温かな智慧に満ちた物語です 。

雷山小過は、空に鳴り響く「雷(長男)」が、どっしりと動かない「山(三男)」の上に重なってできています。

家族の姿に重ねてみると、活動的で元気いっぱいの長男(震)と、静かに家を守る内省的な三男(艮)の組み合わせです。この二人の兄弟のやり取りを中心に、お父さん(乾)の凛とした背中、お母さん(坤)の深い包容力、そして三人の娘たちの華やかさが、すべて「謙虚さ」という一つの調和の中に溶け合っています 

ここでは、誰かが主役になるのではなく、家族全員が「一歩下がる」という優しさを分け合うことで、家の中に温かな平安が満ちていく時なのです。

この卦が教えてくれる「愛の作法」は、ずばり「背伸びをしない、等身大の真心」です。

易経の教えには「大きな事を行うには向かないけれど、小さな事を丁寧に行うにはとても良い時ですよ」という言葉があります 。今の時期は、家族のために何か大きな功績を上げようと焦るよりも、日々の暮らしの些細な綻びを繕うような、細やかな愛情こそが「徳」となります。

例えば、長男が「家族を驚かせるような大きな計画」を立てるのも素晴らしいことですが、今は三男と一緒に、玄関の靴を揃えたり、お母さんの肩を叩いてあげたりするような、そんな控えめで誠実な行動が、家族の心を最も深く癒やしてくれます 

また、「高く飛び上がるよりも、低く下りてくることが幸せを呼ぶ」とも説かれています 。自分のプライドや意見を押し通すのではなく、相手の気持ちに合わせて自分を低くする。その「下りる勇気」こそが、家族を結びつける真実の愛の力なのです 。

小過とは

「雷山小過」という文字には、愛を深めるための哲学的な鍵が隠されています。

  • 「小」:易の世界では「陰」を象徴し、それは母のような「優しさ」や「受け入れる力」を意味します 。家族の小さな溜息に気づき、そっと寄り添う繊細な配慮を大切にしてください。
  • 「過」:これは「少し過ぎる」という意味です。普段の感謝よりも「少しだけ多く」ありがとうと伝える。自分の非を認める時に「少しだけ潔く」謝る 。この「愛の少し多めのスパイス」が、家庭を幸せな香りで包みます。

そして、私たちのブログが大切にする**「愛」**という字。この字の成り立ちは、人が後ろを振り返り、足が進まなくなるほど相手を深く想う姿を描いています 。大切な人を想って歩みを緩め、後ろを振り返る。そんな「雷山小過」の慎ましさと、この字の精神は深く響き合っているのです。

雷山小過(らいさんしょうか)のイメージ

小過。亨。利貞。可小事。不可大事。飛鳥遺之音。不宣上宣下。大吉
「小過」の時 通じる。貞正であれば良い。小事は良いが大事は不可。鳥が飛び去り、音のみが残る。上に昇りすぎると行き場を失うが、下ると安んずる場を得られる。大吉

静寂に包まれた山の上に、優しい春の雷が遠くでゴロゴロと鳴り響く情景を想像してみてください。

その雷は大地を驚かせるためではなく、恵みの雨を呼び、田畑を潤すための合図です。山頂のブナの林や苔むした岩々を雨がしっとりと濡らし、生命を育んでいきます。

そんな風景の中を一羽の鳥が、翼を休めるために、ゆっくりと山の麓へと降りていきます。太陽を目指して高く飛ぶことよりも、愛する家族の待つ温かな巣に帰ることを選ぶ。その鳥の鳴き声だけが、静かな山に愛の記憶として残っていくのです 。この「降りていく幸福」のイメージこそが、今の皆様に届けたい平安の景色です。

雷山小過(らいさんしょうか)の六爻


雷山小過(らいさんしょうか)の六爻は、下から順番に、初爻、二爻。三爻、四爻、五爻、六爻の並びが、初陰、二陰、三陽、四陽、五陰、上陰と並んだ状態を、雷山小過(らいさんしょうか)といいます。


六爻の位置は社会的位置を表しています。 初爻は庶民、二爻は士、三爻は大夫(たいふ)、四爻は公卿(こうけい)五爻は、君主、上爻は隠居した君主、あるいは知識人となります。

上陰  成功しても傲らず、常に「家族のおかげ」と謙虚な心で戻りましょう。

五陰  すぐに結果が見えなくても、皆様の真心は必ず恵みの雨となります 。

四陽  自分が正しいと思う時ほど、山のような静かな心で相手を包んで。

三陽  平和な時ほど、家族への言葉遣いを丁寧に。心の隙間に用心しましょう。

二陰 立派な理屈よりも、温かなおにぎりを作るような「実質的な愛」を。

初陰 自分の未熟さを隠さず、背伸びをしないことから愛は始まります。

結びに

「雷山小過」は、私たちが英雄にならなくても、ただ「優しい家族」であれば、それだけで十分素晴らしいのだと教えてくれます。

特別な日でなくても、一言の優しい言葉、一杯の温かいお茶、そして家族に向ける穏やかな微笑み。そんな小さな「まごころの作法」を、少しだけ丁寧に、少しだけ多めに意識してみてください。その積み重ねが、やがて皆様の家庭に、どんな宝物にも代えがたい「徳」という名の幸せをもたらしてくれるはずです 。

変卦:愛が動く、変化の法則

なぜ、易には「変卦(へんか)」という仕組みがあるのでしょうか。それは、この世界の万物は一刻も休まずに生成し、常に変化し続けるという「変易(へんえき)」の教えに基づいています 。   

たとえば、あなたの人生がどん底に感じられ、とてもマイナスな状況にあるとき、変卦が起こります。あるいは、人生最高!と感じられる華やかな時、突然違うステージが現れることもあるでしょう。これらは全て、愛の習得にかかっています。愛の欠落や、間違った愛し方に対して修正が起こるとき、変卦は起こるのです。私たちの心や家族の状況もまた、留まることなく次の景色へと移ろっていきます。

例えば、今回の「雷山小過」において、上から二番目の**「五爻(ごこう)」**が変化したとしましょう。

五爻は本来「密雲雨ふらず(恵みの雨を待っている状態)」を意味しますが 、ここが動くと、卦は**第三十一番の「沢山咸(たくざんかん)」**へと姿を変えます。

「小過」で慎ましく自分を律してきた愛の物語は、この変化によって「咸(感)」、すなわち理屈を超えて心と心が深く共鳴し合う、瑞々しい感動のステージへと進みます。運気は「静かな忍耐」から「喜びの感応」へと大きく動き出すのです。

もし今、皆様の占いの結果で特定の爻が動いたなら、ぜひその**「変化した後の卦の番号」**を易経の中で探してみてください。そこには、今の慎ましき歩みの先に待っている、新しい愛の物語が記されています。

皆様の歩む一歩一歩が、派手ではなくとも慈愛に満ちた、確かなものでありますように。