雷地豫(らいちよ)
六四卦十六番目に位置するのが、雷地豫(らいちよ)。母☷坤卦(こんけ)の上に長男☳震卦(しんけ)が乗っかった形になります。
上卦は震卦☳(しんけ)です。震卦は陽爻1段の上に陰爻が2段乗った形で、家族においては、長男をあらわします。八卦においては雷を表しています。
下卦は、坤卦☷(こんけ)です。坤卦は陰中の陰を表し、家族においては母親であり、八卦においては地を表しています。
震卦(しんけが表すものは、家族内では長男であり、いずれは家を継いで年老いた両親の面倒を見ながら、墓守をする責任を持っています。また、概念としては、雷という存在であり、天地に轟く雷鳴を聞くと動物も人間も驚きますが、春に響く雷鳴は、自然界に春を告げ、芽吹く春の音としての役割を持っています。雷が大地に落ちることで、その電撃が刺激となり植物たちは、新芽を出します。自然界で発生する雷は、天と地をつなげる架け橋です。天という乾卦と地という坤卦は 震卦という長男により電撃が走る興奮の中で繋がり発奮し活動し、決断を促す役割とも言えます。
坤卦(こんけ)は、家族内では、母としての立場を持ち、大地に責任を持つ存在です。大地に山や谷、沢という自然が広がり、そこに芽吹く自然の息吹は、天との共存で生まれますが、そこには、新しい存在、天と地の間に繋がるものが必要です。その最も強い絆を与えてくれるのが、第一子という最初の子供です。そのような役割を果たしているのが、震卦であり、長男の役割でもあります。最初の子があたえる興奮、発情は、未来に出発できる一歩といえます。
天と地をつなげる存在が震卦であることは、その間に強い愛情をみることができます。愛情は天地の道理の中に存在しますが、それ以上に天地の道理を超えてしまうこともあり、天地の道理を超えた愛情は過多(かた)となり愛の過剰なやりとりは、油断を生みます。愛は喜びに含まれ、存在を自覚できる唯一の存在であるがゆえに、そこには、天地の道理を踏まえた上での愛のやり取りが必要となります。
豫とは、
豫には様々な意味をもって存在しています。ですが、そこには、宇宙が存在しているシステムを踏まえて行かなければなりません。宇宙は絶えず自己犠牲の上に成り立ち、自己を犠牲になるのも他者が成長してゆくために必要であることが基本にあり、親が子を見て自分より大きく育つことと似ています。そこには喜びと熱意が存在しています。豫にはそのような喜びとか楽しむという意味合いが存在します。
豫にはその中でも重要としているのが、楽しむ、懈’(おこたる)あらかじめです。楽しむことは喜びです 懈’(おこたる)は楽しみすぎて箍(たが)を外してしまうことです。あらかじめは、予見、予測といった準備です。物事にうつつをぬかせば油断が起きます。思わぬ失敗を起こすものです。ゆえに楽しむことも良いがあらかじめ予測を立て油断してはならないことを示しています。
雷地豫(らいちよ)のイメージ
予。利建侯行師。
「予」の時、諸侯を動かして争いを行っても良い。
雷鳴は、光とともに遅れて大きく響きます。結果に対し、喜びは遅れてきます。何かを行う時、喜び、楽しみがついてくるとき、それは、天理に沿って行っているので、心がワクワクして没頭します。才能より、努力より、心の状態が前進していれば、熱を発します。しかし、雷鳴は、人に恐怖を感じさせることもあります。すべて、受け入れられない時、争いもありますが、善であれば、熱意をもって楽しみましょう。
雷地豫(らいちよ)の六爻
雷地豫(らいちよ)の六爻は、下から順番に、初爻、二爻。三爻、四爻、五爻、六爻の並びが、初陰、二陰、三陰、四陽、五陰、上陰と並んだ状態を雷地豫(らいちよ)といいます。
六爻の位置は社会的位置を表しています。 初爻は庶民、二爻は士、三爻は大夫(たいふ)、四爻は公卿(こうけい)五爻は、君主、上爻は隠居した君主、あるいは知識人となります。
上陰 快楽に溺れ、歓楽(かんらく)を求め理性が損なわれる。滅亡する。しかし悔い改めることができれば、咎められない。
五陰 部下や下に実権を握るものがいる。ゆえに、悶々(もんもん)とした日々が続くが、常道(じょうどう)を逸脱しなければ滅びることはない。
四陽 天下の楽しみを実現する人である。その志は人々に受け入れられ目的は達成できるだろう。僭越(せんえつ)になりはしないかと恐れることはない、天下に志を同じくするものが徳を持って多く集まる。
三陰 上司にへつらい、虎の威(い)をかりて得意がる。悔い改めることが遅れるなら永久に悔いを残す。
二陰 道を守ること石の如く固く、怠惰逸楽(たいだいつらく)の非(ひ)を悟り、直ちに怠惰逸楽を避けて、正道(しょうどう)に帰り吉
初陰 上司からの寵愛を受け、言動に度を過ぎた行動が目立つ。驕慢(きょうまん)な心が目立ち人が離れやがて行き詰まる。凶
64卦
周易 上経 30卦
NO | 六爻 | 上卦 | 下卦 |
1 | 乾為天(けんいてん) | ☰ 乾 | ☰ 乾 |
2 | 坤為地(こんいち) | ☷ 坤 | ☷ 坤 |
3 | 水雷屯(すいらいちゅん) | ☵ 坎 | ☳ 震 |
4 | 山水蒙(さんすいもう) | ☶ 艮 | ☵ 坎 |
5 | 水天需(すいてんじゅ) | ☵ 坎 | ☰ 乾 |
6 | 天水訟(てんすいしょう) | ☰ 乾 | ☵ 坎 |
7 | 地水師(ちすいし) | ☷ 坤 | ☵ 坎 |
8 | 水地比(すいちひ) | ☵ 坎 | ☷ 坤 |
9 | 風天小畜(ふうてんしょうちく) | ☴ 巽 | ☰ 乾 |
10 | 天沢履(てんたくり) | ☰ 乾 | ☱ 兌 |
11 | 地天泰(ちてんたい) | ☷ 坤 | ☰ 乾 |
12 | 天地否(てんちひ) | ☰ 乾 | ☷ 坤 |
13 | 天火同人(てんかどうじん) | ☰ 乾 | ☲ 離 |
14 | 火天大有(かてんたいゆう) | ☲ 離 | ☰ 乾 |
15 | 地山謙(ちざんけん) | ☷ 坤 | ☶ 艮 |
16 | 雷地豫(らいちよ) | ☳ 震 | ☷ 坤 |
17 | 沢雷随(たくらいずい) | ☱ 兌 | ☳ 震 |
18 | 山風蠱(さんぷうこ) | ☶ 艮 | ☴ 巽 |
19 | 地沢臨(ちたくりん) | ☷ 坤 | ☱ 兌 |
20 | 風地観(ふうちかん) | ☴ 巽 | ☷ 坤 |
21 | 火雷噬嗑(からいぜいこう) | ☲ 離 | ☳ 震 |
22 | 山火賁(さんかひ) | ☶ 艮 | ☳ 震 |
23 | 山地剥(さんちはく) | ☶ 艮 | ☷ 坤 |
24 | 地雷復(ちらいふく) | ☷ 坤 | ☳ 震 |
25 | 天雷无妄(てんらいむぼう) | ☰ 乾 | ☳ 震 |
26 | 山天大畜(さんてんたいちく) | ☶ 艮 | ☰ 乾 |
27 | 山雷頤(さんらいい) | ☶ 艮 | ☳ 震 |
28 | 沢風大過(たくふうたいか) | ☱ 兌 | ☴ 巽 |
29 | 坎為水(かんいすい) | ☵ 坎 | ☵ 坎 |
30 | 離為火(りいか) | ☲ 離 | ☲ 離 |
周易 下経 34卦
NO | 六爻 | 上卦 | 下卦 |
31 | 沢山咸(たくざんかん) | ☱ 兌 | ☶ 艮 |
32 | 雷風恒(らいふうこう) | ☳ 震 | ☴ 巽 |
33 | 天山遯(てんざんとん) | ☰ 乾 | ☶ 艮 |
34 | 雷天大壮(らいてんたいそう) | ☳ 震 | ☰ 乾 |
35 | 火地晋(かちしん) | ☲ 離 | ☷ 坤 |
36 | 地火明夷(ちかめいい) | ☷ 坤 | ☲ 離 |
37 | 風火家人(ふうかかじん) | ☴ 巽 | ☲ 離 |
38 | 火沢睽(かたくけい) | ☲ 離 | ☱ 兌 |
39 | 水山蹇(すいざんけん) | ☵ 坎 | ☶ 艮 |
40 | 雷水解(らいすいかい) | ☳ 震 | ☵ 坎 |
41 | 山沢損(さんたくそん) | ☶ 艮 | ☱ 兌 |
42 | 風雷益(ふうらいえき) | ☴ 巽 | ☳ 震 |
43 | 沢天夬(たくてんかい) | ☱ 兌 | ☰ 乾 |
44 | 天風姤(てんぷうこう) | ☰ 乾 | ☴ 巽 |
45 | 沢地萃(たくちすい) | ☱ 兌 | ☷ 坤 |
46 | 地風升(ちふうしょう) | ☷ 坤 | ☴ 巽 |
47 | 沢水困(たくすいこん) | ☱ 兌 | ☵ 坎 |
48 | 水風井(すいふうせい) | ☵ 坎 | ☴ 巽 |
49 | 沢火革(たくかかく) | ☱ 兌 | ☲ 離 |
50 | 火風鼎(はふうてい) | ☲ 離 | ☴ 巽 |
51 | 震為雷(しんいらい) | ☳ 震 | ☳ 震 |
52 | 艮為山(ごんいさん) | ☶ 艮 | ☶ 艮 |
53 | 風山漸(ふうさんぜん) | ☴ 巽 | ☶ 艮 |
54 | 雷沢帰妹(らいたくきまい) | ☳ 震 | ☱ 兌 |
55 | 雷火豊(らいかほう) | ☳ 震 | ☲ 離 |
56 | 火山旅(かざんりょ) | ☲ 離 | ☶ 艮 |
57 | 巽為風(そんいふう) | ☴ 巽 | ☴ 巽 |
58 | 兌為沢(だいたく) | ☱ 兌 | ☱ 兌 |
59 | 風水渙(ふうすいかん) | ☴ 巽 | ☵ 坎 |
60 | 水沢節(すいたくせつ) | ☵ 坎 | ☱ 兌 |
61 | 風沢中孚(ふうたくちゅうふ) | ☴ 巽 | ☱ 兌 |
62 | 雷山小過(らいざんしょうか) | ☳ 震 | ☶ 艮 |
63 | 水火既済(すいかきせい) | ☵ 坎 | ☲ 離 |
64 | 火水未済(かすいびせい) | ☲ 離 | ☵ 坎 |