【易経】地山謙(ちざんけん)六四卦 易経 周易で観る八人家族の関係性 六十四卦 十五番
地山謙(ちざんけん)

六十四卦の十五番目に位置するのが、地山謙(ちざんけん)。三男☶艮卦(ごんけ)に母☷坤卦(こんけ)が乗っかった卦となります。

上卦は、坤卦☷(こんけ)です。坤卦は陰中の陰を表し、家族においては母親であり、八卦においては地を表しています。
下卦は艮卦☶(ごんけ)です。艮卦は陰爻2段の上に陽爻が乗った形で、家族においては末っ子 三男をあらわします。八卦においては山を表しています。
六十四卦の十五番目に位置するのが地山謙(ちざんけん)です。この卦は、本来ならば天高くそびえ立つはずの険しい山が、あえて謙虚に大地の下へと身を沈めている、奥ゆかしくも気高い姿を表しています。
前回の「火天大有」で手にした大いなる実りや輝きを、決して自分の力だけだとうぬぼれることなく、静かに大地へとお返しする。そんな「愛の完成形」とも言える智慧が、この地山謙には込められています。易経の中でも「すべての爻(段階)が吉」とされるほど、この謙虚さの徳は、私たちの人生を永続的な幸せへと導く黄金の鍵なのです。
家族の構成と象徴:母の愛に包まれた三男の志
地山謙の形を家族に置き換えると、上卦に「母(地)」があり、下卦に「三男(山)」が位置しています。
坤卦(こんけ)は母を表し、艮卦(ごんけ)は末っ子を表し、幼い子供を表しています。幼い子供は母の愛、母の乳房によって育てられるように、坤卦の大地に育てられ、大きく育つまで、母の愛に包まれています。危険なことに対し、母は警告し、言葉をかけて、安全安心を与えています。六爻のうち陰爻が五爻、陽爻が一爻であることをみても、陰爻に包まれた唯一の陽爻であるため、第三爻が下卦の極みにあり、守られた位置を示しています。

坤卦(こんけ)は地を表し、大地は生命を発生させ、豊かにします。艮卦(ごんけ)は山を表し、抱いてから良きエネルギーを受けて育って豊かな山へと育ち四季を豊かに表します。根底から流れる母の愛を受けて、山は豊かになり、幼い子の豊かな感情へと変化します。坤卦(こんけ)と艮卦(ごんけ)が互いに抱き合いその温かな感情が流れて、大地もゆたかにな理、その相乗効果が、この地山謙(ちざんけん)を表現しています。
母と末息子の関係において、異性間の関係において、女性としての母は、男性としての末息子に対し、何でも与えたい愛を与えます。それは、無償の愛ですが、自らの身を犠牲にするものです。犠牲になることを意とも思わず行うその姿を見て、育つ息子には、その犠牲を受け止める中で、偉大なる愛、母の無償の愛を受けるうちに、深く愛されているものに対しての畏敬の念が生まれ、その愛ゆえに頭が下がり、謙虚さを身につけます。謙虚になれるその姿は、愛されているという自覚と、愛を受けたという感情から生まれるものであるために、母の陰中の陰の陰性の気に含まれる、奉仕と犠牲が、三爻の唯一の陽爻に影響を与えています。
この卦は、どっしりとした「山」のような才能と実力を持った三男が、広大な「大地」である母の懐にすっぽりと抱かれている姿を象徴しています。三男は若く、力に溢れていますが、その力を決してひけらかすことはありません。母の温かい教えに従い、自らを低く置くことで、家族の調和を何よりも大切にしているのです。
山が地の下にあるというこの不思議な情景は、「本当の強さとは、見せびらかすことではなく、土台となって支えることにある」という真理を教えてくれます。母という大地がすべてを包み込み、三男という山がその内側で静かに徳を養う。この「隠れたる輝き」こそが、家族の絆をより深く、強固なものにしていきます。
愛の解釈:高きを削り、低きを潤す「真心の作法」
地山謙における「愛の作法」とは、自らの歩みを止めてでも、周囲の欠けた部分を補い、全体を平らに整えることにあります。
自然現象と家族の触れ合い
自然界において、高い山から流れる水は、低い谷を潤し、やがて豊かな平野を創り出します。天の道は満ち溢れるものを削って謙虚な者に与え、大地の道は溢れるものを変化させて低い場所へと流します。家族においても、自分の得意なことや恵まれていることを誇るのではなく、足りない誰かのためにそっと差し出すことが「愛の修正」となります。
例えば、三男が学校で素晴らしい成績を収めたとしても、それを自慢して兄弟を見下すのではなく、「お母さんが毎日お弁当を作ってくれたおかげだよ」と微笑む。あるいは、三女が失敗して落ち込んでいるときに、自分の成功体験を語るのではなく、ただ寄り添って一緒に歩む。このように、自らを低くすることで相手を立て、家族という世界の凹凸をなくしていく姿勢が、地山謙の教える慈愛の形です。
謙とは
謙(けん)は謙虚を示しています。ここでいう謙虚は、へり下ったり卑屈になることではありません。相手を思い、相手を尊敬し、相手の成長のために生きていることを言います。母は、子の成長を願い、全てを捧げますその想いに対し幼い子はわからなくても、無償の愛に対して、笑顔や元気で返していきます。純粋で、素直なまっすぐな思いを捧げます。そこには円滑な人間関係の最も小さな社会を作っているのが、親子関係の中で表さられる謙虚という心の形です。本来の謙虚とは、まず、この世の理(ことわり)を知って、尊重し、常に良きことを受け入れる思いであり、愛の姿と言えます。その謙虚が示すものは、むくわれる豊かさであり、富として与えられます。潜在意識の中に、柔軟な人として示される地山謙(ちざんけん)の謙(けん)であります。
「謙」という字:言葉を合わせて平らにする
「謙」という字は、「言(ことば)」と「兼(あわせる)」から成っています。
「兼」には、二つのものを一つにまとめる、あるいは公平にするという意味があります。つまり、自分の言葉だけを主張するのではなく、相手の言葉と合わせ、物事を平らに整えることが「謙」の本質です。
家族の会話の中で、自分の正しさを証明しようとするのではなく、相手の想いを汲み取り、調和の取れた解決策を見出していく。その「言葉の作法」が、地山謙の美しさなのです。
地山謙(ちざんけん)のイメージ
謙。亨。君子有終吉
「謙」の時、通じる。君子はすべて全うすることができる。吉
善行(ぜんこう)を数多くつみ日々コツコツと貯めて行かなければ、栄光にも名誉にもならないが、また、悪行(あくこう)も数多く重ねなければ、その身を滅ぼすこともない。謙虚は全てに通じ、君子たるもの全てにつうじることができる。小人(しょうじん)はわずかな善行で利益を得ようとして、わずかの善行さえめんどくさがり楽に悪事を重ね。悪行を重ね身を滅ぼすことになる。君子は小さな善行を溜め込むため、何事のおいても感謝を感じるため、相手に対し、謙虚な心が自然と増えるため、栄光と名誉が現れると言える。
地山謙(ちざんけん)の六爻
地山謙(ちざんけん)の六爻は、下から順番に、初爻、二爻。三爻、四爻、五爻、六爻の並びが、初陰、二陰、三陽、四陰、五陰、上陰と並んだ状態を地山謙(ちざんけん)といいます。

六爻の位置は社会的位置を表しています。 初爻は庶民、二爻は士、三爻は大夫(たいふ)、四爻は公卿(こうけい)五爻は、君主、上爻は隠居した君主、あるいは知識人となります。

上陰 謙虚な心が言葉として現れても、人々には理解されない。兵を動かしても自分の管理できる範囲でのみ平定するにとどめるのが良い。

五陰 冨貴(ふき)の身でありながら、自己満足に陥らず、万民と共に賢者(けんじゃ)の教えを乞い、それでも、帰服(きふく)せぬものがあれば、真意を持って征服しても、順調に行く。

四陰 物事全てに対し、謙虚であれば、その心の故、法度(はっと)に違うことなく、万事順調に進む。

三陽 天下を前に、その志に謙虚な心があれば君子である。万民が感動し心服(しんぷく)し吉

二陰 謙虚はその言葉に表れる。心を失うことがなければ吉。

初陰 いやがうえにもへりくだり、身の徳を得る者が君子である。大河に立ち向かう危険があろうとも吉。
変卦:愛が動く、変化の法則
易経が説く「変易」は、私たちの愛が停滞せず、常に新しく生まれ変わるための「機(きっかけ)」を教えてくれます。地山謙が示す謙虚さもまた、固定されたものではなく、状況に応じてその形を変えていくのです。
変化を「愛の習得」と捉えることで、人生のどんな曲がり角も、徳を積むための大切な転換点へと変わります。
哲学の提示:変化は「真心の調律」
なぜ、完璧に思える地山謙から変化が起こるのでしょうか。それは、謙虚さが行き過ぎて「卑屈」になったり、あるいは「謙虚に振る舞う自分」に酔いしれたりすることを防ぐための、天からの調律です。変化は、私たちが再び「愛の真ん中」に戻るための、優しい手招きなのです。
人生の浮き沈みと愛の修正
- 静かな時の変化: 「何もしないこと」が謙虚だと勘違いしているとき、一歩踏み出す勇気という愛を教えるために起こります。
- 活動的な時の変化: 自分の努力を過信しそうになったとき、再び原点に立ち返り、他者を支える喜びを思い出すために起こります。
変化はすべて、私たちが「愛し方の作法」をより深く、より美しく習得するために用意された贈り物です。
具体的な変化の提示:三爻が動く時
ここでは、地山謙の物語で最も力強く働いていた「三爻(九三)」が動いた場合を想定してみましょう。
- 変化後の卦の番号: 第二番
- 変化後の卦の名前: 坤為地(こんいち)
- 運気の具体的な変化: 「努力を誇らない謙虚さ」から「すべてを包み込み育てる受容」へ
地山謙の三爻は、唯一の「陽(強い力)」として、汗を流して働く三男の姿でした。しかし、この爻が動いて「陰」に変わると、六つの爻すべてが陰となる、母性の極み「坤為地」へと変容します。
これは、今まで「自分の努力で家族を支えよう」と踏ん張っていたエネルギーが、さらに一段深い「すべてを天に任せ、ただ慈しみ育てる」という大地そのものの愛へと昇華することを意味します。愛の修正としてのメッセージは、「あなたの努力は十分に天に届きました。これからは無理に動こうとせず、章(あや)を含みて、自分の才能をそっと内に秘め、母のような包容力で家族を信じ、待ち、受け入れなさい」というものです。
読者へのメッセージ
64卦
周易 上経 30卦
| NO | 六爻 | 上卦 | 下卦 |
| 1 | 乾為天 (けんいてん) | ☰ 乾 | ☰ 乾 |
| 2 | 坤為地(こんいち) | ☷ 坤 | ☷ 坤 |
| 3 | 水雷屯(すいらいちゅん) | ☵ 坎 | ☳ 震 |
| 4 | 山水蒙(さんすいもう) | ☶ 艮 | ☵ 坎 |
| 5 | 水天需(すいてんじゅ) | ☵ 坎 | ☰ 乾 |
| 6 | 天水訟(てんすいしょう) | ☰ 乾 | ☵ 坎 |
| 7 | 地水師(ちすいし) | ☷ 坤 | ☵ 坎 |
| 8 | 水地比(すいちひ) | ☵ 坎 | ☷ 坤 |
| 9 | 風天小畜(ふうてんしょうちく) | ☴ 巽 | ☰ 乾 |
| 10 | 天沢履(てんたくり) | ☰ 乾 | ☱ 兌 |
| 11 | 地天泰(ちてんたい) | ☷ 坤 | ☰ 乾 |
| 12 | 天地否(てんちひ) | ☰ 乾 | ☷ 坤 |
| 13 | 天火同人(てんかどうじん) | ☰ 乾 | ☲ 離 |
| 14 | 火天大有(かてんたいゆう) | ☲ 離 | ☰ 乾 |
| 15 | 地山謙(ちざんけん) | ☷ 坤 | ☶ 艮 |
| 16 | 雷地豫(らいちよ) | ☳ 震 | ☷ 坤 |
| 17 | 沢雷随(たくらいずい) | ☱ 兌 | ☳ 震 |
| 18 | 山風蠱(さんぷうこ) | ☶ 艮 | ☴ 巽 |
| 19 | 地沢臨(ちたくりん) | ☷ 坤 | ☱ 兌 |
| 20 | 風地観(ふうちかん) | ☴ 巽 | ☷ 坤 |
| 21 | 火雷噬嗑(からいぜいこう) | ☲ 離 | ☳ 震 |
| 22 | 山火賁(さんかひ) | ☶ 艮 | ☳ 震 |
| 23 | 山地剥(さんちはく) | ☶ 艮 | ☷ 坤 |
| 24 | 地雷復(ちらいふく) | ☷ 坤 | ☳ 震 |
| 25 | 天雷无妄(てんらいむぼう) | ☰ 乾 | ☳ 震 |
| 26 | 山天大畜(さんてんたいちく) | ☶ 艮 | ☰ 乾 |
| 27 | 山雷頤(さんらいい) | ☶ 艮 | ☳ 震 |
| 28 | 沢風大過(たくふうたいか) | ☱ 兌 | ☴ 巽 |
| 29 | 坎為水(かんいすい) | ☵ 坎 | ☵ 坎 |
| 30 | 離為火(りいか) | ☲ 離 | ☲ 離 |
周易 下経 34卦
| NO | 六爻 | 上卦 | 下卦 |
| 31 | 沢山咸(たくざんかん) | ☱ 兌 | ☶ 艮 |
| 32 | 雷風恒(らいふうこう) | ☳ 震 | ☴ 巽 |
| 33 | 天山遯(てんざんとん) | ☰ 乾 | ☶ 艮 |
| 34 | 雷天大壮(らいてんたいそう) | ☳ 震 | ☰ 乾 |
| 35 | 火地晋(かちしん) | ☲ 離 | ☷ 坤 |
| 36 | 地火明夷(ちかめいい) | ☷ 坤 | ☲ 離 |
| 37 | 風火家人(ふうかかじん) | ☴ 巽 | ☲ 離 |
| 38 | 火沢睽(かたくけい) | ☲ 離 | ☱ 兌 |
| 39 | 水山蹇(すいざんけん) | ☵ 坎 | ☶ 艮 |
| 40 | 雷水解(らいすいかい) | ☳ 震 | ☵ 坎 |
| 41 | 山沢損(さんたくそん) | ☶ 艮 | ☱ 兌 |
| 42 | 風雷益(ふうらいえき) | ☴ 巽 | ☳ 震 |
| 43 | 沢天夬(たくてんかい) | ☱ 兌 | ☰ 乾 |
| 44 | 天風姤(てんぷうこう) | ☰ 乾 | ☴ 巽 |
| 45 | 沢地萃(たくちすい) | ☱ 兌 | ☷ 坤 |
| 46 | 地風升(ちふうしょう) | ☷ 坤 | ☴ 巽 |
| 47 | 沢水困(たくすいこん) | ☱ 兌 | ☵ 坎 |
| 48 | 水風井(すいふうせい) | ☵ 坎 | ☴ 巽 |
| 49 | 沢火革(たくかかく) | ☱ 兌 | ☲ 離 |
| 50 | 火風鼎(かふうてい) | ☲ 離 | ☴ 巽 |
| 51 | 震為雷(しんいらい) | ☳ 震 | ☳ 震 |
| 52 | 艮為山(ごんいさん) | ☶ 艮 | ☶ 艮 |
| 53 | 風山漸(ふうさんぜん) | ☴ 巽 | ☶ 艮 |
| 54 | 雷沢帰妹(らいたくきまい) | ☳ 震 | ☱ 兌 |
| 55 | 雷火豊(らいかほう) | ☳ 震 | ☲ 離 |
| 56 | 火山旅(かざんりょ) | ☲ 離 | ☶ 艮 |
| 57 | 巽為風(そんいふう) | ☴ 巽 | ☴ 巽 |
| 58 | 兌為沢(だいたく) | ☱ 兌 | ☱ 兌 |
| 59 | 風水渙(ふうすいかん) | ☴ 巽 | ☵ 坎 |
| 60 | 水沢節(すいたくせつ) | ☵ 坎 | ☱ 兌 |
| 61 | 風沢中孚(ふうたくちゅうふ) | ☴ 巽 | ☱ 兌 |
| 62 | 雷山小過(らいざんしょうか) | ☳ 震 | ☶ 艮 |
| 63 | 水火既済(すいかきせい) | ☵ 坎 | ☲ 離 |
| 64 | 火水未済(かすいびせい) | ☲ 離 | ☵ 坎 |

