山天大畜(さんてんたいちく)

六十四卦の二十六番目に位置するのが、山天大畜(さんてんたいちく)。父の卦 乾卦(けんけ)(☰)の上に末っ子の艮卦(ごんけ)(☶)が乗っかっている形になります。

上卦は艮卦☷(ごんけ)です。艮卦は陰爻2段の上に陽爻が乗った形で、家族においては末っ子 三男をあらわします。八卦においては山を表しています。

下卦の乾卦☰(けんけ)です。乾卦は陽中の陽を表し、八卦においては、天を表し、家族の中では父を表しています。

六十四卦の二十六番目に位置するのが山天大畜(さんてんたいちく)です。この卦は、天を貫くほどの壮大な山の中に、広大な天のエネルギーがすっぽりと収まっている姿を表しています。

愛の世界においても、大切なのは「蓄えること」です。自分の想いをすぐに言葉や形にするのではなく、相手を想う気持ちや、共に歩むための知恵をじっくりと心に溜めていく。その静かな蓄積こそが、いつか家族や社会を照らす大きな光へと変わるのです。本日は、この「蓄える愛の作法」を、父と三男の絆を通して読み解いてまいります。

家族の構成と象徴:三男の静寂が父の剛健さを包む

山天大畜の卦は、上に「艮(ごん)」、下に「乾(けん)」を配しています。私たちの家族では、上卦の艮は「三男」を、下卦の乾は「父」を象徴しています。

父は「天」であり、何物にも屈しない強さと剛健な意志を持っています。三男は「山」であり、動かずにどっしりと留まる力を持っています。この卦の形は、父という偉大なエネルギーを、三男という静かな山が内側に抱き込み、大切に守っている姿です。

幼い末っ子から見れば、父は大きく何でもできる自分を愛してくれる大事な存在であり、近くに父の姿が見えないと、一気に不安になります。幼い末っ子は、遊びに夢中になりすぎて、動き回りますが、父は、目で追いかけて、危険を察知するとすぐに駆け寄り、諭しながらも優しく声をかけます。

幼い末っ子は、早く大人になりたいと思う自分と、いつまでもこのまま遊んでいたい自分が存在し、父親は、大きな存在として、絶えず制御された力を押し付けてくる思いに駆られますが、それは、天の理(ことわり)を知らない幼い末っ子に対して、教え込もうとする成約でもあります、

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ただ、自然の法則において、季節がめぐり、木々や植物 動物は、規則性だけで存在できますが、人間は、そこに、喜怒哀楽といった感情の中で、自らの意志で行動を制御する自制心を育んでいくための自律性が存在します。

動物と人との違いは、この自らを悟らしめる自律性によることが大きく、幼い末っ子は、父から大きな制御力を持って、この自律性を育てられるため、この時期、停滞を余儀なくされていますがこれは、大きく成長するための大切な時期と言えます。

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父が長年培ってきた経験や信念を、三男が素直に、そして深く自分の心に蓄えていく。三男は決して目立とうとはしませんが、その内側には父譲りの「天の光」が満ち溢れています。この「受け継ぎ、蓄える」という親子の信頼関係が、大畜の根幹にある愛の形です。

愛の解釈:徳を養い、器を大きくする「蓄積の作法」

山天大畜が教える愛は、目に見える華やかさよりも、目に見えない「内面の充実」を重んじます。

自然現象と家族の触れ合いが教えるもの

天が山の中にあるという情景は、広大な宇宙の真理が、一人の人間の心(山)の中に宿っているようなものです。これを家族に置き換えると、親の深い愛情や先祖代々の教えを、子供が大切に守り、育んでいる状態となります。

例えば、三男が父から「人の役に立つことの尊さ」を学んだとき。彼はすぐにそれを喧伝するのではなく、日々の小さな手伝いや勉強を通じて、その教えを自分の血肉にしていきます。この「静かに力を蓄える時期」は、一見すると何も進んでいないように見えますが、実は心の器を大きく広げている、最も豊かな時間なのです。

愛とは、表現することと同じくらい「自分の中に溜めておくこと」が大切です。相手を大切に想う気持ちを、感謝の言葉を、そして共に困難を乗り越えるための知恵を、心の貯金箱に少しずつ蓄えていく。その蓄えが十分になったとき、愛は大きな川を渡るような勇気となって、世界へ溢れ出していくのです。

大畜とは、

「畜(ちく)」という字は、上部の「玄(げん=黒い、奥深い)」と下部の「田」から成り立っています。これは、もともと「養分に富んだ肥沃な黒土」を意味しており、そこから「やしなう」「飼う」「溜める」といった意味に広がりました。

つまり「大畜」とは、ただ溜め込むのではなく、自分という人間を「豊かな土壌」にすること。家族の愛を栄養として取り込み、自分の魂を肥やしていくことで、周りの人々を養えるだけの大きな存在になることを目指しているのです。

単純に大きなものが小さなものを養うことを意味します。

大が、小をとどめ、養う、偉大な王が人材を養護する育成することを言い、会社に入った新入社員が、すぐには、即戦力になりませんが、そこにおいて教育し、育てることで、将来においての人材を育てる期間といえます。

養い、大いに実力をつけさせるためには、一人ひとりの成長するスピードも違い、早熟し、すすめる者いますが、遅延する者もいます。その時、大いなる王はどう考え、どのように行動し、どのように進めるのでしょう、我が子であれば、育ち方の違いを知って行動できます。それは、そこに、愛があり、育てようという情があります。

将来において、倉庫にたくさんの穀物を蓄えるためには、田畑を茂らせ、豊作にしなければならないでしょう。そのためには、大地に必要な 水や栄養を与え、良い気候に恵まれる必要があるように、大望を抱くのであれば、まず力を蓄え、人徳、人脈、知識、資金 気力、精気を養うことで、危険や障害に打ち勝つ、知恵やアイデア、により克服できるものを育てる時期が、この大畜という卦です

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大畜のイメージ

大畜。利貞。不家食吉。利渉大川。
「大畜」の時、貞正であれば良い。家にいないで、世間に打って出て吉。大川を渡っても 良い。

「大畜」は、大きく蓄える。
この卦は、停滞を意味します。たとえ、技術や能力があっても、停滞するときがあります。小さなことからコツコツとはじめの一歩を踏み出すにも、ただただイノシシのごとく進むのでなく。亀のようにじっくり出ていくべきです。目的目標がないのであれば、停滞は長引きますが、目的目標があるのであれば、家でご飯を食べている時ではありません。すぐに結果が出なくとも、世間に打って出ていくべき時期です。

大畜の六爻

山天大畜(さんてんたいちく)の六爻は、下から、順番に、初爻、二爻。三爻、四爻、五爻、六爻の並びが、初陽、二陽、三陽、四陰、五陰、上陽と並んだ状態を、山天大畜(さんてんたいちく)と言います。

六爻の位置は社会的位置を表しています。 初爻は庶民、二爻は士、三爻は大夫(たいふ)、四爻は公卿(こうけい)五爻は、君主、上爻は隠居した君主、あるいは知識人となります。

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上陽 広大無辺の天の道理を体得し、自在に行動できる、道 大いに行われる。かならず賢者の能力に応じて広く与えられる。

五陰 杭(くい)に繋がれた子豚である。軽拳妄動(けいきょもうどう)を戒めば、喜びを得られる 吉

四陰 囲いの中にいる子牛である。軽拳妄動(けいきょもうどう)であれば順調にいく。

三陽 駿馬に乗り、疾走する。なおも、区をうするが、変わることなく努力するのが良い、絶えず努力し、自らの武芸に励み、上司と志を合わせて進めば、順調に行く。

二陽 車体より車輪が外れる、猛進するものは捨て置いて、中庸でいるならば咎められない。

初陽 進めば危うい。災いを避けてとどまれば 吉

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変卦:愛が動く、変化の法則

易経が説く「変易」の理は、蓄えられたエネルギーが臨界点に達したとき、世界が劇的に、そして平和に変化することを教えてくれます。

哲学の提示:変化を「大いなる解放」として捉える

なぜ、蓄える時期が終わり、変化が起こるのでしょうか。それは、あなたの内側に溜まった愛が、もはや自分一人では抱えきれないほど大きく、豊かになったからです。変化は、あなたが育てた「徳」を、世界中の人々と分かち合うための機(きっかけ)なのです。

人生の浮き沈みと愛の修正

長く不遇の時代を過ごし、誰にも評価されずに忍耐を続けてきた人にとって、この「変卦」は最高の救いです。報われない努力などありません。あなたが「もう無理だ」と思うほど蓄えてきた忍耐は、すべて「愛の習得」のための大切なプロセスでした。今、その重荷は、世界を幸福にするための贈り物へと変わります。

運気の具体的な変化:

「山天大畜」の上爻は、止めていた力が一気に解放され、天の道がどこまでも開けていく時です。その爻が動くことで、事態は易経の中で最もめでたい卦の一つである「地天泰」へと昇華します。

「泰(たい)」とは、安泰、平和、そして天と地が完璧に混ざり合う調和を象徴しています。

  • わだかまりの消失: 天の気が下り、地の気が上がることで、家族や社会のあらゆる関係がスムーズに疎通し始めます。
  • 絶頂の盛運: 蓄えてきた実力や愛が、最も良い形で発揮されます。目上の人(父)からも認められ、目下の人(弟や妹)からも慕われる、安泰の時期です。
  • 万物の生成化育: あなたがそこにいるだけで、周囲の人々が元気づけられ、新しい命やアイデアが次々と芽吹いていくでしょう。

蓄える苦しみ(大畜)から、すべてが通じ合う喜び(泰)へ。あなたの愛は今、自分を磨くための修行を終え、世界を温かな春の陽光で包み込む「泰平の愛」へと進化したのです。

64卦

周易 上経 30卦

NO六爻上卦下卦
1乾為天 (けんいてん)☰ 乾 ☰ 乾
2坤為地(こんいち)☷ 坤☷ 坤
3水雷屯(すいらいちゅん)☵ 坎 ☳ 震
4山水蒙(さんすいもう)☶ 艮 ☵ 坎
5水天需(すいてんじゅ)☵ 坎 ☰ 乾
6天水訟(てんすいしょう)☰ 乾 ☵ 坎
7地水師(ちすいし)☷ 坤 ☵ 坎
8水地比(すいちひ)☵ 坎☷ 坤
9風天小畜(ふうてんしょうちく)☴ 巽☰ 乾
10天沢履(てんたくり)☰ 乾 ☱ 兌
11地天泰(ちてんたい)☷ 坤 ☰ 乾
12天地否(てんちひ)☰ 乾 ☷ 坤
13天火同人(てんかどうじん)☰ 乾 ☲ 離
14火天大有(かてんたいゆう)☲ 離 ☰ 乾
15地山謙(ちざんけん) ☷ 坤 ☶ 艮
16雷地豫(らいちよ)☳ 震 ☷ 坤
17沢雷随(たくらいずい)☱ 兌 ☳ 震
18山風蠱(さんぷうこ)☶ 艮 ☴ 巽
19地沢臨(ちたくりん)☷ 坤 ☱ 兌
20風地観(ふうちかん)☴ 巽 ☷ 坤
21火雷噬嗑(からいぜいこう)☲ 離 ☳ 震
22山火賁(さんかひ)☶ 艮 ☳ 震
23山地剥(さんちはく)☶ 艮 ☷ 坤
24地雷復(ちらいふく)☷ 坤 ☳ 震
25天雷无妄(てんらいむぼう)☰ 乾 ☳ 震
26山天大畜(さんてんたいちく)☶ 艮 ☰ 乾
27山雷頤(さんらいい)☶ 艮 ☳ 震
28沢風大過(たくふうたいか)☱ 兌☴ 巽
29坎為水(かんいすい)☵ 坎 ☵ 坎
30離為火(りいか)☲ 離 ☲ 離

周易 下経 34卦

NO六爻上卦下卦
31沢山咸(たくざんかん)☱ 兌 ☶ 艮
32雷風恒(らいふうこう)☳ 震☴ 巽
33天山遯(てんざんとん)☰ 乾☶ 艮
34雷天大壮(らいてんたいそう)☳ 震 ☰ 乾
35火地晋(かちしん)☲ 離 ☷ 坤
36地火明夷(ちかめいい)☷ 坤 ☲ 離
37風火家人(ふうかかじん)☴ 巽 ☲ 離
38火沢睽(かたくけい)☲ 離 ☱ 兌
39水山蹇(すいざんけん)☵ 坎 ☶ 艮
40雷水解(らいすいかい)☳ 震 ☵ 坎
41山沢損(さんたくそん)☶ 艮 ☱ 兌
42風雷益(ふうらいえき)☴ 巽 ☳ 震
43沢天夬(たくてんかい)☱ 兌 ☰ 乾
44天風姤(てんぷうこう)☰ 乾 ☴ 巽
45沢地萃(たくちすい)☱ 兌☷ 坤
46地風升(ちふうしょう)☷ 坤☴ 巽
47沢水困(たくすいこん)☱ 兌☵ 坎
48水風井(すいふうせい)☵ 坎 ☴ 巽
49沢火革(たくかかく)☱ 兌 ☲ 離
50火風鼎(かふうてい)☲ 離 ☴ 巽
51震為雷(しんいらい)☳ 震 ☳ 震
52艮為山(ごんいさん)☶ 艮 ☶ 艮
53風山漸(ふうさんぜん)☴ 巽 ☶ 艮
54雷沢帰妹(らいたくきまい)☳ 震 ☱ 兌
55雷火豊(らいかほう)☳ 震 ☲ 離
56火山旅(かざんりょ)☲ 離 ☶ 艮
57巽為風(そんいふう)☴ 巽 ☴ 巽
58兌為沢(だいたく)☱ 兌 ☱ 兌
59風水渙(ふうすいかん)☴ 巽 ☵ 坎
60水沢節(すいたくせつ)☵ 坎 ☱ 兌
61風沢中孚(ふうたくちゅうふ)☴ 巽 ☱ 兌
62雷山小過(らいざんしょうか)☳ 震 ☶ 艮
63水火既済(すいかきせい)☵ 坎 ☲ 離
64火水未済(かすいびせい)☲ 離 ☵ 坎