【易経】水地比(すいちひ)六四卦 易経 周易で観る八人家族の関係性 六十四卦 八番
水地比(すいちひ)

六十四卦八番目に位置するのが、水地比(すいちひ)となります。水地比(すいちひ)は、母、坤卦 ☷の上に、次男、坎卦 ☵がのっかった卦です。青年である次男が上から母を包み込んで抱いている状態といえます。

上卦は、坎卦☵(かんけ)です。坎卦は、家族の中では、次男を表し八卦においては、水を表します。
下卦の坤卦☷(こんけ)です。坤卦は陰中の陰を表し、地を表し、家族の中では母を表しています。
六十四卦の八番目に位置するのが水地比(すいちひ)です。この卦は、大地の上に水がゆったりと広がり、土に深く染み込んでいくように、人々が寄り添い、助け合う「親しみ」の姿を象徴しています。
前の「地水師」では、目的のために力を合わせる「組織の愛」を学びましたが、この第八番目では、打算や義務感を超えた、魂同士の「ふれあい」が説かれます。水が大地を潤し、大地が水を受け入れることで草木が育つように、愛する人とぴたりと寄り添うことの喜びと、そのための「真心の作法」を物語として紐解いていきましょう。
幼少期から青年に変わった若者は、幼い頃よりふんだんに、無償の愛を受けて育ちました。見返りを求めない愛は、親子の愛から発生し、愛された感覚は、社会に出ていった時、多くの恵みを青年に与えます。母より与えられた愛は青年を通じて社会に人とのコミュケーションへとつながっていきます。
母は、青年が路頭に迷った時、ただ抱いて心を落ち着かせます。若い青年はいつしか母の背を越して上から覆いかぶさりますが、母は下から顔を撫ぜて、幼い子供の頃よりも変わらず青年を慈しみ、抱いてくれます。
人とのコミュケーションは、家族の中で育み、母の愛で確信へと変わります。愛されて育っら私は、家族の愛をより大きな存在としての社会に奉仕し返すことで、結局、母が喜びを感じることを知っています。
良いことも悪いことも自分の内に問題があることを悟らせてくれるのも、愛された実感、感覚により、母の元に立ち返り、悪い報告も、良い報告も母に伝えることで、自分の立ち位置に戻ることができます。
家族の構成と象徴:慈愛の母と、誠実な次男の融和
水地比は、上に「水」、下に「地」が重なり合っています。これは、家族を支える母と、その愛に応える次男の、最も美しい調和の形です。
下卦「坤(地)」:全てを受け入れる母
下に位置する「地」は「母」の象徴です。大地は何があっても動じず、降る雨をそのままに受け入れる深さを持っています。この卦において、母は家族の「受け皿」となり、誰もが安心して戻ってこられる温かな土壌として存在しています。
上卦「坎(水)」:大地に潤いを与える次男
上に位置する「水」は「次男」を象徴しています。これまでの旅路で多くの困難(険難)を乗り越えてきた次男の心は、今や大地を潤す清らかな水となりました。母という大地と一つになることで、彼は自らの居場所を見つけ、周囲に恵みを与える存在へと成長したのです。
比(ひ)の愛:ぴたりと寄り添う二人
「比」という字は、二人の人間が仲良く並んでいる姿を表しています。水が大地に染み込めば、もう水と土を分けることはできません。母と子が、あるいは家族同士が、言葉を超えて「阿吽(あうん)の呼吸」で通じ合う。そんな、密着して離れない深い絆が水地比の愛の形です。
愛の解釈:甕に満ちる誠実と「親しみの作法」
水地比が教える「愛の作法」は、内側に溢れるほどの誠意を持つことです。
「比は吉なり」と説かれるように、人と親しむことは幸せへの近道です。しかし、誰とでも無防備に近づけば良いわけではありません。易経は、親しむべき相手を正しく選び、自分自身が「親しまれるに足る誠実さ」を備えているかを自らに問うことを求めています。
家族の間でも、ただ一緒にいるだけでは本当の「比」にはなりません。古い言葉に「缶(ほとぎ:素朴な器)にまこと有り」という教えがあります。豪華な飾りはなくとも、質素な器の中にたっぷりと注がれた水のように、飾らない真心が家族の間に満ちていること。その誠実さが外へと溢れ出したとき、家族の輪は自然と広がり、多くの助けが得られるようになるのです。
比とは
比の文字は、人々が二人並んで親しみ合い、助け合うことを意味します。比較というのも互いに上下をきめるのに使う言葉ですが、比較する対象があって初めて比較は起こります。
坤卦(こんけ)☷は大地、地の上に蓄えられた水があり、大地と水によって草木を育てている万物を育てているのです。
比は吉であります。何事に対しても、和睦(わぼく)の心で行えば多くの人々は、仰ぎ従うでしょう。
比は、熟慮(じゅくりょ)し、協議し、コミュニティを組み、大らかで変わらぬ親睦(しんぼく)を立てたなら、よく行くことを示しています。
「比」の字:肩を並べて歩む喜び
「比」という字は、人が二人並んで同じ方向を向いている姿です。これは一方が他方を支配するのではなく、対等なパートナーとして、あるいは信頼し合う仲間として、肩を組んで楽しみ、助け合う様子をイメージさせます。愛とは、向かい合って見つめ合うだけでなく、同じ未来を隣で見つめ、歩調を合わせて進むことなのです。
水地比(すいちひ)のイメージ
比。吉。原筮。元永貞无咎。不寧方来。後夫凶。
「比」の時。吉、筮竹に尋ね。天意にしたがえ、不安が来るが、ちゅうちょすれば凶。
物事には道理があり、その道理を正すことを天は願います。人の心には、善でありたいとながう心と、自分以外は信用できないという悪なる心がはびこっています。 人と比較すれば、必ず、疑心が生まれ、悪鬼は自分の心に居場所を求めます。
しかし、天は善であるため、悪なる物事に触れることができず、人が、自ら良き方向に向かうように願いますが、悪に染まった心であれば、悪なる心に手を差し伸べることができないゆえに、天意に従うことを望みます。
小さな不安は、躊躇(ちゅうちょ)すれば触手を広げ伸びて、不安や恐怖を増長(ぞうちょう)させます。 小さな不安をそのままにせず、母に伝え、家族に伝えることで、消化できます。消化できないことは、必ず凶をもたらします。
水地比(すいちひ)の六爻
水地比(すいちひ)の六爻は、下から順番に、初爻、二爻。三爻、四爻、五爻、六爻の並びが、初陰、二陰、三陰、四陰、五陽、上陰と並んだ状態を、水地比(すいちひ)といいます。

六爻の位置は社会的位置を表しています。 初爻は庶民、二爻は士、三爻は大夫(たいふ)、四爻は公卿(こうけい)五爻は、君主、上爻は隠居した君主、あるいは知識人となります。

上陰 親しくしようとしても、時機(じき)を失い。終焉を全うせず身を滅ぼす。

五陽 人に親しむこと公明正大、1点の私心もない。王者は、狩りをする時、勢子(せこ)を三方に置いて一箇所に逃げ場を設け、逃げるものは追わない。,去るものを追わない寛大な思い出接するなら、人民は安心にてついてくる。(※公明正大:公的で私心がない。)

四陰 賢明な天子に親しむ。 永く上司、目上の人に親しみ、正しい心でいるなら吉である。

三陰 近所付き合いを願っていても、周りにいるものは、ふさわしいものがいない。孤独であり、憐れむ存在。

二陰 衷心(ちゅうしん)から天子に親しむ。永く、衷心の思いを持ち続ければ、吉(※ 衷心(ちゅうしん):まごころの奥に潜む良心、)」

初陰 誠実に近所と付き合えば、咎(とが)めはない。人を愛する思いが溢れていれば、思わぬ良き事に恵まれる。
変卦:愛が動く、変化の法則
易経は、どんなに親密な関係であっても、それは静止したものではなく、常に変化し続ける「機(きっかけ)」に満ちていると説きます。「水地比」という密着した状態から変化が起こるとき、それは愛がさらなる「高まり」へと向かう合図です。
九五が動くとき:親密さから「大いなる観照」へ
水地比の要である、九五(五番目の爻)が変化した場合を想定してみましょう。これは、特定の誰かと親しむ愛を超えて、より多くの人々や、世界そのものを慈しむ愛へと視野が広がる瞬間です。
- 変化後の卦の番号: 第二十番
- 変化後の卦の名前: 風地観(ふうちかん)
- 運気の具体的な変化: 密着して助け合う「比」から、高い視点で見守り、自らも手本となる「観(かん)」へ 。
九五が変化するということは、あなたが家族という小さな枠の中での愛を完成させ、次は「見守る愛」を学ぶ段階に来たことを意味します。大地(下卦:坤・母)の上に、清々しい風(上卦:巽・長女)が吹き抜ける「風地観」の姿です。
これは、寄り添うだけでなく、一歩離れたところから深い慈しみをもって家族を見守り、自らの生き方を通して「愛とは何か」を教えるリーダーシップへの移行です。 変化した後の卦の番号「第二十番」をぜひ探してみてください。そこには、親しみを知った魂が辿り着く、静かで澄み切った愛の風景が描かれています。変化は、あなたの愛をより崇高なものへと磨き上げてくれるはずですよ。
64卦
周易 上経 30卦
| NO | 六爻 | 上卦 | 下卦 |
| 1 | 乾為天 (けんいてん) | ☰ 乾 | ☰ 乾 |
| 2 | 坤為地(こんいち) | ☷ 坤 | ☷ 坤 |
| 3 | 水雷屯(すいらいちゅん) | ☵ 坎 | ☳ 震 |
| 4 | 山水蒙(さんすいもう) | ☶ 艮 | ☵ 坎 |
| 5 | 水天需(すいてんじゅ) | ☵ 坎 | ☰ 乾 |
| 6 | 天水訟(てんすいしょう) | ☰ 乾 | ☵ 坎 |
| 7 | 地水師(ちすいし) | ☷ 坤 | ☵ 坎 |
| 8 | 水地比(すいちひ) | ☵ 坎 | ☷ 坤 |
| 9 | 風天小畜(ふうてんしょうちく) | ☴ 巽 | ☰ 乾 |
| 10 | 天沢履(てんたくり) | ☰ 乾 | ☱ 兌 |
| 11 | 地天泰(ちてんたい) | ☷ 坤 | ☰ 乾 |
| 12 | 天地否(てんちひ) | ☰ 乾 | ☷ 坤 |
| 13 | 天火同人(てんかどうじん) | ☰ 乾 | ☲ 離 |
| 14 | 火天大有(かてんたいゆう) | ☲ 離 | ☰ 乾 |
| 15 | 地山謙(ちざんけん) | ☷ 坤 | ☶ 艮 |
| 16 | 雷地豫(らいちよ) | ☳ 震 | ☷ 坤 |
| 17 | 沢雷随(たくらいずい) | ☱ 兌 | ☳ 震 |
| 18 | 山風蠱(さんぷうこ) | ☶ 艮 | ☴ 巽 |
| 19 | 地沢臨(ちたくりん) | ☷ 坤 | ☱ 兌 |
| 20 | 風地観(ふうちかん) | ☴ 巽 | ☷ 坤 |
| 21 | 火雷噬嗑(からいぜいこう) | ☲ 離 | ☳ 震 |
| 22 | 山火賁(さんかひ) | ☶ 艮 | ☳ 震 |
| 23 | 山地剥(さんちはく) | ☶ 艮 | ☷ 坤 |
| 24 | 地雷復(ちらいふく) | ☷ 坤 | ☳ 震 |
| 25 | 天雷无妄(てんらいむぼう) | ☰ 乾 | ☳ 震 |
| 26 | 山天大畜(さんてんたいちく) | ☶ 艮 | ☰ 乾 |
| 27 | 山雷頤(さんらいい) | ☶ 艮 | ☳ 震 |
| 28 | 沢風大過(たくふうたいか) | ☱ 兌 | ☴ 巽 |
| 29 | 坎為水(かんいすい) | ☵ 坎 | ☵ 坎 |
| 30 | 離為火(りいか) | ☲ 離 | ☲ 離 |
周易 下経 34卦
| NO | 六爻 | 上卦 | 下卦 |
| 31 | 沢山咸(たくざんかん) | ☱ 兌 | ☶ 艮 |
| 32 | 雷風恒(らいふうこう) | ☳ 震 | ☴ 巽 |
| 33 | 天山遯(てんざんとん) | ☰ 乾 | ☶ 艮 |
| 34 | 雷天大壮(らいてんたいそう) | ☳ 震 | ☰ 乾 |
| 35 | 火地晋(かちしん) | ☲ 離 | ☷ 坤 |
| 36 | 地火明夷(ちかめいい) | ☷ 坤 | ☲ 離 |
| 37 | 風火家人(ふうかかじん) | ☴ 巽 | ☲ 離 |
| 38 | 火沢睽(かたくけい) | ☲ 離 | ☱ 兌 |
| 39 | 水山蹇(すいざんけん) | ☵ 坎 | ☶ 艮 |
| 40 | 雷水解(らいすいかい) | ☳ 震 | ☵ 坎 |
| 41 | 山沢損(さんたくそん) | ☶ 艮 | ☱ 兌 |
| 42 | 風雷益(ふうらいえき) | ☴ 巽 | ☳ 震 |
| 43 | 沢天夬(たくてんかい) | ☱ 兌 | ☰ 乾 |
| 44 | 天風姤(てんぷうこう) | ☰ 乾 | ☴ 巽 |
| 45 | 沢地萃(たくちすい) | ☱ 兌 | ☷ 坤 |
| 46 | 地風升(ちふうしょう) | ☷ 坤 | ☴ 巽 |
| 47 | 沢水困(たくすいこん) | ☱ 兌 | ☵ 坎 |
| 48 | 水風井(すいふうせい) | ☵ 坎 | ☴ 巽 |
| 49 | 沢火革(たくかかく) | ☱ 兌 | ☲ 離 |
| 50 | 火風鼎(かふうてい) | ☲ 離 | ☴ 巽 |
| 51 | 震為雷(しんいらい) | ☳ 震 | ☳ 震 |
| 52 | 艮為山(ごんいさん) | ☶ 艮 | ☶ 艮 |
| 53 | 風山漸(ふうさんぜん) | ☴ 巽 | ☶ 艮 |
| 54 | 雷沢帰妹(らいたくきまい) | ☳ 震 | ☱ 兌 |
| 55 | 雷火豊(らいかほう) | ☳ 震 | ☲ 離 |
| 56 | 火山旅(かざんりょ) | ☲ 離 | ☶ 艮 |
| 57 | 巽為風(そんいふう) | ☴ 巽 | ☴ 巽 |
| 58 | 兌為沢(だいたく) | ☱ 兌 | ☱ 兌 |
| 59 | 風水渙(ふうすいかん) | ☴ 巽 | ☵ 坎 |
| 60 | 水沢節(すいたくせつ) | ☵ 坎 | ☱ 兌 |
| 61 | 風沢中孚(ふうたくちゅうふ) | ☴ 巽 | ☱ 兌 |
| 62 | 雷山小過(らいざんしょうか) | ☳ 震 | ☶ 艮 |
| 63 | 水火既済(すいかきせい) | ☵ 坎 | ☲ 離 |
| 64 | 火水未済(かすいびせい) | ☲ 離 | ☵ 坎 |

